7月30日(火)から8月1日(木)の日程で、2泊3日の関東研修を実施し、1・2年生合計30名の生徒が参加しました。
1日目の午前は東京大学大学院理学研究科の塩見美喜子先生の研究室を訪問しました。塩見先生からは「小さなRNAによる生体の仕組みの制御」と題して、ご講義いただきました。タンパク質合成に関わらない『非コードRNA』がタンパク質合成を制御したり、高等な生物ほど非コードRNAを産生しているなど、普段のSSH生物αの授業に関連した高度な研究について学ぶことができました。
その後、塩見先生の研究室に所属している学生の方々から受験や大学生活についてお話しいただき、さらに研究室を案内していただきました。
午後は東京大学大学院工学系研究科の藤井秀樹先生を訪問しました。藤井先生は社会シミュレーションなどを研究しており、開発した交通流シミュレーターを用いた研究では、交通量や信号のタイミングなどを設定し自動車の流れを検証することで渋滞緩和などの問題に関する解決策を見出して、実際に自治体に提案するなど、社会と工学の関りについてご講義いただきました。
その後、明和高校の卒業生で、現役東大生との座談会を行いました。高校の先輩という身近な存在であるおかげで、受験のことや理系・文系の選択や学部の選択について、ざっくばらんにお話を聞くことができました。
関東研修2日目はつくばへ移動し、午前中は高エネルギー加速器研究機構【KEK】の見学を行いました。最初に常設展示ホール「KEKコミュニケーションプラザ」にて加速器が動く仕組みや素粒子について学んだり、霧箱等の展示物を見たり触れたりしました。さらに、小林・益川理論の実証に貢献した衝突型加速器KEKBをアップグレードしたSuperKEKBの見学をし、その規模の大きさや構造の複雑さに驚嘆しました。
その後、『小林・益川理論』で2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠先生(明和高校の卒業生)から、物理研究の歩みや素粒子についてご講義いただきました。生徒はこれまでの授業で、陽子や中性子、電子については学んだことがありましたが、今回クォークという素粒子を知るとともに、『PC相称性の破れ』の証明にはクォークが6種類ある必要があるという理論について学ぶことができました。
午後は筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構【ⅢS】(International Institute for Integrative Sleep Medicine)を訪問しました。ここでは睡眠研究の世界的権威である柳沢正史先生から「睡眠の謎に挑む~原理の追求から社会実装まで~」と題してご講義いただきました。日本人の睡眠時間は世界で一番短いというお話しとともに、睡眠により記憶が整理されたり洞察力が向上したりすることや、睡眠不足は脳のパフォーマンスが下がるということ、睡眠と体内時計に関わる物質などについて学ぶことができました。また、睡眠の質を上げる寝室の環境として、夜は暗く、朝は光が入るようにすることや、音は静かに、特に人の声には覚醒の効果があるので注意が必要であるなど、すぐに実践できる方法を教えていただきました。
その後、柳沢先生がデザインに関わったというモダンで最新の建物や研究室を見学しました。
夜は夕食の会場で、明和高校の卒業生で現役筑波大学生徒の座談会を行いました。各テーブル1~2名の先輩についてもらい、高校時代の部活と勉強の両立についてや、当時の明和高校の先生の話、大学の下宿や寮の話など、身近な話題で盛り上がることができました。
関東研修3日目は、気象庁地磁気観測所へ行きました。初めに地磁気観測歴17年というベテランの長町信吾氏から地磁気の諸要素や地磁気観測の方法とそこから分かることなどについてご講義いただきました。その後、実際に地磁気観測を体験させてもらい、その結果から芝生の中に埋められた強力磁石の場所を探るという実習を行いました。そして生徒たちは見事に磁石の場所を探し当てることができ、長町氏からお褒めの言葉をいただきました。
午後は地磁気観測所の各施設を見学させていただきました。昔ながらの観測器や、古くても現役で働いている観測器などを見せていただきました。
今回の関東研修で、生徒たちは多くのことを学び、充実した3日間となりました。そして高校卒業後の進路や研究したい道、将来の職業について考える良い機会となりました。