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SSH事業 「数学 夏の学校」

「数学 夏の学校」実施報告

「数学 夏の学校」は,「夏のSSH事業」の中に開設されている講座で,今年度で8年目になります。今年度は全部で10講座開講し,課題研究(2年生普通科全員で取り組む)の基礎として位置付けられる講座です。以下に,受講後の生徒の特徴的な記述を掲載します。

講座番号:1 「集団での追跡と逃避」
実施日・会場: 8月6日(月) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生25名     外部参加 中学生19名  高校生1名  教員4名   総計49名
講師:  大平徹 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
内容:「追跡と逃避」の歴史と内容を具体的に説明する形で講義が進められた。はじめに、「猫とネズミの問題」が取り上げられ、直線から円(2次元)、そして空間(3次元)へと話が発展していった。次に、鳥や魚の群れの動画が提示された後、ボイド(引き離し・整列・結合という3つの動作規則を与えることで、動物の群れを再現したシミュレーション)というコンピュータ上の生命体に話がおよんだ。多くの動画が紹介され、これらの研究が、車の自動運転やドローンの集団制御などの実用性の高い分野への応用が期待されていることが感じられた。他にも、自動車の自然渋滞発生のメカニズムについての説明、白血球が異物を追いかける動画の提示、バランス制御の実験映像をもとにした「遅れ」についての説明がなされた。簡単なルールを組み合わせて複雑なものを作り上げていくことを数理モデルで説明する研究を、適確に紹介した講義内容であった。
参加者の感想
・鳥やイワシが群れを作るのは生物学に近いと思っていたが、数学とも関連していて、しかも数式に表せるということに驚きました。
・数学が新たなことを解明する切り口になったり、あることを示す結果となったり、数学の幅がとても広がった。自動運転やドローンに関しては、日常生活にも関係することだから、苦手な数学の勉強を頑張ってみようと思った。自分の数学の価値観を180°変えてくれるような貴重な講座であった。
・鳥の群れ(集団行動)から得た発見を自動運転の技術に活かすなど、数学の力を社会の発展に役立てていく様子がわかって、とてもためになった。

講座番号1
講座番号:2  「流体力学の世界」
実施日・会場: 7月25日(水) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生23名  2年生3名     外部参加 中学生13名  高校生4名  教員5名   総計48名 講師:木村芳文 先生 (名古屋大学多元数理科学研究科教授)
内容:◇はじめに、ブラックホールの周りの降着円盤とジェット、太陽のフレア、台風、ジェット機の作る渦、車の空気抵抗、美味しく炊ける炊飯器など、具体的な流体力学の応用例があげられた。次に、天気図や二次元の渦の運動について説明があり、ベクトル場のイメージが紹介された。また、微分方程式の意味についても、ベクトル場の立場から説明があった。流体の運動を数学で記述する研究であることがよく分かり、流体力学の世界を堪能できる講義であった。
参加者の感想
・今まで自分は、数学の利用についてあまり考えたことがなかったが、様々な分野で研究を支える「流体力学」は、率直に面白いと思った。数学がこんなにも主となり、身近な生活と深く結びついていると知ったので、学校で学んでいる数学も重要な意味をもってくるように感じた。
・等圧線に沿って風が吹くことを知らなかった。流体力学で説明できるとおっしゃったので、自分で理解できるようにさらに勉強したいと思った。
・数学と理科はつながっていると強く感じた。微分・積分を学習してから、もう一度流体力学について学びたいと思う。
講座番号2
講座番号:3 「ゲーム理論」
実施日・会場: 7月27日(金) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生31名  2年生1名     外部参加 中学生44名  高校生4名 教員3名   総計83名
講師 : 花園誠 先生(名古屋大学大学院経済学研究科教授)
内容:「ゲーム理論」とは、二人以上が意志決定を行う状況において最適な方法を選択するための理論である。参加者は最初にNOT 100を行い、その戦略を考えた。必勝法を考える中で後ろ向き帰納法など数学が関係していることを知った。次に抜き打ち検査ゲームを例にゲーム理論における「ナッシュ均衡」の考え方が紹介された。この理論は勝敗の決まる2人の対戦型ゲームにとどまらず、勝敗に関わらない利害関係や社会状況の分析に有用である。その例として囚人のジレンマが紹介された。数学が社会科学の問題分析に役立っていることを知る大変興味深い講座であった。
参加者の感想
・経済学分野のかなりの部分に数学が含まれていることがわかった。数学は身の周りの生活とはかけ離れていると考えていたが、本当はそれほどかけ離れたものではなく、身近なものであることに気がついた。経済学に興味があるので、次は広く浅くではなく、深く勉強したい。
・数学の実用性に気がつくことができた。授業で習ったグラフや表を、この講座ではとても有効活用していた。数学とは関係なさそうな分野において、あえて数学的な観点から物事を見る部分に面白さを感じた。
・期待値を考えて、それに基づいて行動することや、確率を変動させて最適化を考えるところが面白かった。また、個人の最善の行動が、必ずしも社会全体の利益にならないことが、数学的に説明できることも面白かった。ナッシュ均衡についてもう少し深く学びたい。
講座番号3
講座番号:4 「素数と暗号の不思議」
実施日・会場: 7月31日(火) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生32名  2年生2名     外部参加 中学生24名  高校生10名 教員3名   総計71名
講師 : 内山成憲 先生(首都大学東京 大学院理学研究科教授)
内容:前半は、IT社会における個人情報や認証技術としての暗号の話から始まった。平文(ひらぶん)を暗号化し、暗号文を復号して平文に戻す一つの方法がRSA暗号であり、その原理には、大きな自然数の素因数分解が鍵となっていることが紹介された。後半は、その原理をユークリッドの互除法やフェルマーの小定理、オイラーの定理を使って説明された。高校で学習する整数分野の知識で、暗号化技術が構成されていることがわかり、数学が現代社会を支えていることを再認識する機会となった。
参加者の感想
・ネットショッピングにおける暗号化や、電話でのコイントスなど、身近な話題がとても面白かった。学校で習った数学が、このようなところで活かされている事を知ったので、これから数学の勉強に意欲的に取り組みたい。
・コンピュータであれば何でもできると思っていたが、158桁の自然数の素因数分解など、困難なものがあることを知り、少し驚いた。現代になくてはならないコンピュータの元祖を考えたチューリングさんについて調べてみたいと思った。
・桁数の多い自然数の素因数分解が難しいことが、現代のIT社会を支えていることに驚いた。数学が社会の役に立っていることに気がついた。
講座番号3
講座番号:5 「四元数入門」
実施日・会場: 8月7日(火) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生17名  2年生6名     外部参加 中学生4名  高校生2名 教員4名   総計33名
講師:  伊師英之 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授)
内容:複素数平面上の点(ベクトル)の回転が、複素数の積で表されることについて、具体例を上げながら説明があった。これを3次元に拡張し空間内のベクトルの回転を表現しようと、ハミルトンが苦労のすえ考え出したものが四元数である。ベクトルの内積・外積と四元数の関係や、CG分野における四元数の有用性について解説された。19世紀に生み出された数学が、現代の身近なものに応用されていることを知ることができ、数学の面白さを存分に味わうことができる講座内容であった。
参加者の感想
・ハミルトンのように、新たな数学の世界を作り出す執念に驚いた。自分にはそこまでは無理だけど、数学の知識をもっと深めたくなった。四元数についてもさらに勉強したい。
・ベクトルをまだ習っていないので、ついていけるか不安だったが、各所で丁寧な説明があったので、なんとか理解することができた。数学の歴史とからめた説明が面白かった。
・四元数と、ベクトルの内積・外積が関連していることを知ることができた。数学のベクトルや物理を学ぶときに、四元数のことも考えてみようと思う。
・実際に存在しない数が、現実の世界で役に立つというところが面白く感じた。
講座番号5
講座番号:6 「連分数とフォードの円」
実施日・会場: 7月24日(火) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生14名     外部参加 中学生14名  高校生4名 教員4名   総計36名
講師 : 糸健太郎 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授)
内容:連分数の紹介があり、簡単な計算をして連分数に慣れた上で、A4用紙を折って正方形を作っていく作業から√2 と連分数の図形的な意味に関する説明、さらには黄金比φへと発展的な内容に講義は進んだ。また、フィボナッチ数列と黄金比との関係について、ひまわりの種の並びを利用して説明した後、フォードの円へと発展し、√2 や黄金比φとの関係についての説明があった。黄金比や連分数などの難しい数学の用語等は出てきたものの,丁寧な説明で中学生にもわかりやすく,参加者は興味を持って講義を聞き入っていた。
参加者の感想
・数式において難しいと感じることがあったとき、それを図で表し、そこから読み解いて考えることの良さを知ることができた。式で表現される問題と、図の問題をついつい切り離して考えがちだが、関連づけて考えると、より理解が深まると思った。
・数学が、植物の構造にまで関係していることが面白いと感じた。他にも、連分数が何かと関係しているのではないかと思った。
・数学には、幾何や代数など様な分野があるが、それらが相互関係していることがわかった。これについて、他にも例を探したい。
講座番号6
講座番号:7 「グラフ理論入門 Introduction to Graph Theory」
実施日・会場: 8月3日(金) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生13名  2年生5名     外部参加 中学生7名  高校生5名 教員4名   総計34名
講師:  藤江双葉 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授) 
内容:本講義は、今年度の夏の学校の中で唯一の英語による講義である。「グラフ」とは、頂点と辺の集合で構成される図形であり、その頂点と辺のつながり方に着目してグラフの性質を調べる数学がグラフ理論である。前半は、言葉の説明やHandshaking Lemma(握手補題)についての講義であった。後半は、Pertersen graph(3-regular,order10のグラフの中でも特別なグラフ)はtraceable graphであるが、Hamiltonian graphでないことを証明した。「モノとモノのつながり方を抽象化して捉えるというグラフ理論の面白さ」と「英語で学ぶことの楽しさ」を一度に得られる良い機会となった。
参加者の感想
・このようなことも数学に含まれるのか、と思った。問題のパターンを覚えることが数学の勉強だと思っていたが、学校で習う数学とは違う面白さがあり、すごく興味が湧いた。今日学んだグラフ理論をさらに勉強したい。
・数学のグラフというと、関数のグラフや折れ線グラフのようなものしか思いつかなかったけれど、今回学んだグラフは、いろいろな視点で考えることで新しい発見があるので、とても面白い内容だと思った。数学では、より柔軟な考え方が大切だと、あらためて思った。
・点と線だけのグラフなのに、これだけのものを思考できることが素晴らしいと思った。今まで考えもしなかったことばかりで、自分の視野が少し広がった気がした。
講座番号7
講座番号:8  「江戸時代の数学」
実施日・会場: 8月2日(木) 愛知県立明和高等学校
参加者: 本校生徒 1年生29名   2年生1名     外部参加 中学生22名  高校生1名 教員4名   総計57名
講師:  深川英俊 先生(和算研究家)
内容:江戸時代、庶民が楽しみながら数学を楽しんでいた様子を、その歴史的背景から説明がなされ理解を深めることができました。同時にそのレベルの高さにも驚かされました。その中から優秀な数学者が生まれ、全国を行脚し数学を広めていたことが各地の算額等から確認できました。日本各地の神社に奉納されている算額の初等幾何問題等について、演習形式で紹介がありました。最後に普段眼にすることのない実物大の算額(レプリカ写真)を間近に見ることで、現代の数学とは違う江戸時代の表現方法と接し当時の日本人に誇りを感じることができました。
参加者の感想
・かつての日本人は数学を楽しく学んでいたことを、そして現代の私たちも楽しく学べるということを興味深く感じ、歴史を感じることができた。数学は苦手だと思っていたけど、新たな数学の一面を見ることができたので、あらためて勉強していきたい。
・江戸時代の数学は、意外と高度で簡単に解けるものではなかった。江戸時代にも、このような問題を考えたり解いたりする人がいて、すごいなと思った。江戸時代にはルートがないと思っていたが、実際にはあったので驚いた。
・数学は、やっぱり楽しいものだなぁと感じた。江戸時代と違って、現代ではやりたいことだけ学ぶというわけにはいかない。それでも楽しいと思った分野は、江戸時代の人のように究めていきたいと思う。
講座番号8
講座番号:9 「一般相対性理論と数学」
実施日・会場: 7月26日(木) 愛知県立瑞陵高等学校
参加者: 本校生徒 1年生15名  2年生2名     外部参加 中学生44名  高校生8名  教員9名   総計78名
参加者:本校生徒 1年生 6名  2年生 3名 外部参加 中学生 10名  高校生 4名 教員 1名 総計 24名
内容:重力を「時空のゆがみ」と考えたアインシュタインの天才的発想と、ローレンツ変換やアインシュタイン方程式の意味についても説明があった。空間のゆがみの証拠としての重力レンズ、アインシュタインの方程式から導かれるブラックホールと膨張する宇宙の話などが紹介された。難しい内容ではあったが、多くの質問が飛び出し、参加者の興味・関心をかきたてる講義内容であった。
参加者の感想
・広大な宇宙の不思議の一部が、小さな一つの惑星に住む我々の数学で説明できることにとても驚いた。人間の好奇心の強さに感心した。このような素晴らしい研究と発見を、私たちが受け継いでいかなければならないと実感した。
・自分なりに宇宙とブラックホールのことについて理解することができた。しかし、一つ一つの公式の意味、言葉の意味を深く理解することはできなかったので、これらをしっかり理解できるように今後勉強して行きたい。
・学校で習う数学は、ただ公式を使って問題を解くような感じだけど、この講座に参加して、生活の中であるとか実際に存在するものと数学に関連があることを知り、身近に感じることができた。
講座番号9
講座番号:10 「ビリヤードは数学」
実施日・会場: 7月26日(木) 愛知県立瑞陵高等学校
参加者: 本校生徒 1年生19名   2年生2名     外部参加 中学生36名  高校生2名 教員5名   総計64名
講師 : 渡辺喜長 先生(愛知県立瑞陵高等学校教諭)
内容:最短経路問題を導入として「反射の原理」について解説があった。そこからビリヤードの球の反射や、エアホッケーの必勝法について、様々なパターンがクイズ形式で出題され、演習形式で講座が進行した。実際にミニ・ビリヤードやミニ・エアホッケーでの実演もあった。身近なものが数学と関連していることを楽しく学ぶことができた。
参加者の感想
・数学を身近なゲームに応用して考えることは、学校の授業で学ばないのでとても新鮮に感じられた。また、ゲームを数学的に考えると、そのゲームの新たな魅力を発見できるとも感じた。
・最短距離が光の反射であるという考え方は、新しい発見でした。数学でない分野から発展して、数学に関連した話になるということが興味深かった。問題を自分で発展させられるように、普段の勉強を意識してやって行きたい。
講座番号10