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SSH事業 「数学 夏の学校」

「数学 夏の学校」実施報告

アラカルト講座の中に「数学 夏の学校」として,夏季休業中に開設している講座で,今年度で7年目になります。今年度は全部で12講座開講し,課題研究(2年生普通科全員で取り組む)の基礎として位置付けられる講座です。以下に,受講後の生徒の特徴的な記述を掲載します。

講座番号:1 「四平方数の定理とワーリング問題」
講師: 松本耕二 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
実施日・会場: 7月24日(月) 13:30~15:30 本校
参加者数:本校生徒 1年生 13名  2年生 12名  外部参加 中学生 2名  高校生 4名 教員 4名 総計 35名 
内 容:はじめに、ラグランジュの四平方数定理(全ての自然数は高々4つの平方数の和で表せる)が提示された。前半は、それを立方数等に拡張した場合を考えるワーリング問題について説明があり、1700年代初頭から現代に至るまで、各国の数学者たちが協力して得られた成果と歴史、及び未解決問題について紹介された。後半は、オイラーの恒等式を用いて、ラグランジュの四平方数定理の証明に挑戦した。整数論に挑む純粋数学の世界を堪能できる講座であった。
特徴的な生徒の記述
・数学の研究はかなり昔からあって、それが現代でも生きていることがわかった。また世界共通で研究が進んでいくこともすごいなと思った。世界共通で同じ問題に取り組むという姿勢が、数学 以外にも生きると良いと思った。 ・ワーリングがコンピュータを使わずに、いくつかの問題(g(3)=9、g(4)=19など)を予想していたことがすごいと思った。オイラーなど、すばらしい数学研究者について調べてみたいと思った。
・四平方数定理を今回は代数計算的な考え方で証明していましたが、図形を用いて証明できるのではないかと思いました。
・現在、全世界で数学の研究が進んでいることに驚いた。あらためて数学は全世界で共通であることに気がつかされた。
講座番号1
講座番号:2  「流体力学の世界」
講師:木村芳文 先生 (名古屋大学多元数理科学研究科教授)
実施日・会場: 8月2日(水) 10:00-12:00 本校
参加者: 本校生徒 1年生 13名  2年生 15名  外部参加 中学生 21名  高校生 5名 教員 0名 総計 54名
内 容:宇宙空間における星団、太陽のフレア、磁気嵐、台風の発生と進路予想、ジェット機の作る渦、車の空気抵抗、速く泳げる水着、美味しく炊ける炊飯器など、具体的な流体力学の応用例があげられた。次に、身近な流体現象として、船の作る波が、速度によらず一定の角度(40°弱)以内であることを幾何的に証明した。そしてベクトル場を考えることで、天気図や渦の運動について説明があり、流体力学の世界をイメージすることができた。流体の運動を数学で記述する研究であることがよく分かり、参加する生徒にとって有意義な講義となった。
特徴的な生徒の記述
・流体力学は、想像していたよりも日常生活と関わりの深い学問であることに驚いた。興味のあるなしに関わらず、幅広い分野の学問に触れてみたいと思った。
・太陽は表面よりも上空の方がはるかに高温であることと、そのことがまだ解明されていないことに驚いた。
・文系の自分には、これまでも、これからもおそらく深く学ぶことのない学問であるが、今回一つの経験として、流体力学に触れることができて良かった。宇宙のような大きなものから天気のような身近なものにまで関係していることを知り、幅広い学問なんだなと感じました。
講座番号2
講座番号:3 「宇宙と幾何学」
講師:白水徹也 先生 (名古屋大学多元数理科学研究科教授)
実施日・会場: 7月26日(水) 10:00-12:00 本校
参加者:本校生徒 1年生 20名  2年生 8名  外部参加 中学生 7名  高校生 9名 教員 3名 総計 47 名
内 容:初めに、私たちが存在する空間は曲がっているという事実について紹介され、GPSなどの技術もその曲がり具合を考慮してあるから成立しているという、中・高校生に取っては意外とも思える話で参加者を引きつけていった。その曲がり具合を知るために、曲がった時空での幾何学を平坦な空間から少しずつ類推し、曲率という概念を導いた。相当高度な内容ではあったが、平易になるようにかなり簡略化し、それでいてエッセンスを押さえた講義であった。後半では、物質の分布と曲率に関係があることからアインシュタイン方程式を紹介され、実際に、フリードマンモデルでのアインシュタイン方程式の解について紹介されていた。短い時間であったが、参加者の宇宙に対する見方を変えてしまうほどの講義であった。
特徴的な生徒の記述
・私たちは平坦な空間の中で生活していると思っていたが、実は曲がった空間の中で生活していることを知って驚いた。
・曲がった空間でも2点間を結ぶ最短の曲線を考えることが、空間の曲がり方を調べるために大切だと思った。
・宇宙は平坦ではなく、基本を曲線(曲面)において、話が進んでいったので、新しい見方ができました。
講座番号3
講座番号:4 「素数と暗号の不思議」
講師: 内山成憲(首都大東京 理工学研究科教授)
実施日・会場: 8月8日(火) 10:30-12:30 本校
※台風接近にともない中止(代替講座として講座番号28を開講)
講座番号:5 「ラムゼー問題と巨大数」
講師:伊師英之 先生(名古屋大学多元数理科学研究科准教授)
実施日・会場: 8月23日(水) 10:00-12:00 本校
参加者:本校生徒 1年生 20名  2年生10名  外部参加 中学生 19名  高校生 2名 教員 1名 総計 52名
内 容:はじめにSIMと呼ばれるゲーム(6個の頂点から2点を赤線と青線で交互に結ぶとき、赤い三角形または青い三角形ができたら勝負あり)が紹介され、2人1組になって演習した。このゲームをグラフ理論で説明し、6個の点の場合に必ず勝負がつくことが証明された。そして、必ず勝負がつく最小の点の数nをラムゼー数と呼ぶが、頂点の数や生じる完全グラフによって、このラムゼー数を求めることの難しさについて、具体例を上げながら説明があった。このラムゼー数を考える際に登場した最大数が、ギネスブックに掲載されているグラハム数である。単純なゲームから始まって、グラフ理論、クヌースの矢印記号、「数学の証明で使われた最も大きい数」に至るまでの過程で、数学の理論のスケールの大きさを存分に味わうことができる講座であった。
特徴的な生徒の記述
・グラハム数のように、日常生活では全く触れることのない大きな数が面白かった。数学で次元を変えて問題を考えていくところがとても興味深い。
・ラムゼーゲームの説明は難しかったが、きちんと証明できることに感心した。数学は本当に深いなあと思った。
・ラムゼーゲームみたいな単純なゲームでも、数学的に式を立てたり、証明できることが面白かった。
講座番号5
講座番号:6 「ゲーム理論」
講師:花園誠 先生(名古屋大学大学院経済学研究科 准教授)
実施日・会場: 7月31日(月) 13:30-15:30 本校
参加者:本校生徒 1年生 13名  2年生 23名 外部参加 中学生 29名  高校生 5名 教員 1名 総計 71名
内 容:「ゲーム理論」とは」、二人以上が意志決定を行う状況において最適な方法を選択するための理論である。参加者は最初に石取りゲームを行い、その戦略を考えた。必勝法を考える中で後ろ向き帰納法、2進数展開など数学が関係していることを知った。次に変則的なジャンケンゲームを例にゲーム理論における「ナッシュ均衡」の考え方が紹介された。この理論は勝敗の決まる2人の対戦型ゲームにとどまらず、勝敗に関わらない利害関係や社会状況の分析に有用である。その例として囚人のジレンマ、プライスのパラドックスが紹介された。数学が社会科学の問題分析に役立っていることを知る大変興味深い講座であった。
特徴的な生徒の記述
・Nim(石取りゲーム)の必勝法に関して、2進数に展開させて考える、その別の視点から見る考え方に感動しました。
・なんとなく頭で考えていたようなことを、グラフ化したり図示することではっきりわかるようになった。
・今までゲームの戦略といえば、表情に気をつけたり、想像することしか考えていなかったが、ゲーム理論で学んだ最適な手についてこれからは試してみたいと思った。
講座番号6
講座番号:7 「江戸時代の数学」
講師: 深川英俊 先生 (和算家)
実施日・会場:7月28日(金) 13:30-15:30 本校
参加者:本校生徒 1年生 8名   2年生 15名  外部参加 中学生 20名  高校生 1名 教員 2名 総計 46名 
内 容:前半は、「塵劫記」のネズミ算や日本各地の神社に奉納されている算額の初等幾何問題について、演習形式で紹介があった。また、有名な油分け問題についても丁寧に解説があった。後半は、実物大の算額(レプリカ写真)や関孝和の和算の原書(実物)を披露しながら、クイズ形式で文化遺産としての和算についての紹介があった。江戸時代は、庶民が楽しみながら数学を楽しんでいた様子が良くわかり、同時にそのレベルの高さにも驚いた。日本人の誇りがもてる内容であった。
特徴的な生徒の記述
・江戸時代の人々は、数学を道具としただけでなく、遊びとして楽しんでいたことがわかった。天井にまで問題を書くなど、よほど数学が好きだったのだろう。
・江戸時代にも微分がよく使われていたことを知ったが、微分の考えはどこから来たものなのか、どうしてよく使われたのか、気になった。
・自分より年齢の低い人が難しい問題を考えていた事を知り、とても驚きました。また、そのような子は、どのような学習方法をしていたのか、気になりました。
講座番号7
講座番号:8  「対数と計算尺」
講師:服部展之 (本校教諭) アシスタント:SSH部数学班生徒2名
実施日・会場:8月1日(火) 10:00-12:00 本校
参加者:本校生徒 1年生 6名  2年生 0名 外部参加 中学生 12名  高校生 1名 教員 0名 総計 19名
内 容:指数の拡張、対数の定義と対数法則の説明があり、常用対数を利用した近似値計算の演習に挑戦した。その後、計算尺を使った近似値計算を体験し、両者が一致することを確認した。過去の人類の知恵と、理屈を理解することの大事さを学ぶことができた。また、アシスタントのSSH部数学班の生徒が要所で解説を行い、参加した中学生にとっても良い刺激になった。
特徴的な生徒の記述
・現代では電卓やコンピュータの登場により、計算尺は使われくなっている。しかし、計算尺には、いろいろな人たちの知恵がつまっていることを忘れてはならない。
・数学がいろいろな形で使われていることを教えてもらった。将来、難しい公式や考え方は必要ないと思っていたが、その考え方が大きく変った。
・常用対数の用途はわかったが、2や5を底とする対数の用途はあるのか、考えてみたい。
・問題を解くときに、何故そこにその公式を使うのか、何故その答えが出てくるのか、道理を明確にして自分なりの考えをもちながら数学や理科などに関わっていきたい。
講座番号8
講座番号:9 「数学を英語で学ぼう!」
講師:川野景子 (本校教諭)
実施日・会場:7月27日(木) 13:30-15:30 本校
参加者:本校生徒 1年生 6名  2年生 3名 外部参加 中学生 10名  高校生 4名 教員 1名 総計 24名
内 容:前半は、 ”How to sketch Parabolas(放物線の描き方)”というテーマで、英語で書かれたテキストを丁寧に読んでいくことを目的とした講義であった。受講生は頂点、x軸、y切片、~について対称、解の公式、分数、2乗、曲線などの英単語を知るとともに、日本語と英語での数学的な表現の違いを楽しんでいた。後半は、3~4名のグループになり、英語で書かれた初見の問題を読み、解くことを体験した。どのグループも協力して行っていた。数学、英語の両方とも、もっと勉強していきたいと感じた受講生が多いようであった。
特徴的な生徒の記述
・数学でよく使う言葉は英語でこのように言うのかと驚いたり、新たな解き方を英語で習ったことで、数学をより深く理解できるようになった。
・とても新鮮な感じがした。日本と海外では頂点の求め方が違ったり、解の書き方が違ったりしたのでおもしろいと思った。
・同じグループの中学生の子たちとも協力し合いながら、普通の授業のときよりも楽しく数学と英語を学ぶことができた。
講座番号9
講座番号:10 「集団での追跡と逃避」
講師:大平徹 先生 (名古屋大学多元数理科学研究科教授)
   実施日・会場:7月28日(金) 10:30-12:30 愛知県立瑞陵高等学校
参加者:本校生徒 1年生 9名  2年生 6名     外部参加 中学生 17名  高校生4名 教員 1名 総計 37名
内 容:「追跡と逃避」の歴史と内容を、具体的に説明する形で講義が進められた。はじめに、18世紀の「猫とネズミの問題」が取り上げられた。次に、白血球が異物を追いかける映像や、鳥や魚の群れの動画が提示された後、ボイド(各粒子に分離・整列・結合という動作規則を与えることで、鳥の群れを再現したシミュレーション)というコンピュータ上の生命体に話がおよんだ。他にも、自動車の自然渋滞発生のメカニズムや、モンスタープリンセス問題の最適解について説明された。生物などの複雑な振る舞いを数理モデルで説明する研究を、的確に紹介した講義内容であった。
特徴的な生徒の記述
・ある事象について数学的、物理的、生物的など、いろいろな方面から考えることができるところが面白いと思った。
・18世紀ごろの昔から考えられていることが、21世紀になっても発展し続けていることに驚いた。鳥の群れの動きに関する研究が自動運転システムにも活かされて、現代の科学を支えていることにも驚いた。
・1対1では動きを数式で表現することはできても、数が増えるとできない、というところに興味がわいた。何か別に表現できる方法があるのか、またそれはこれから生まれてくるのか、追究したいと思った。
講座番号10
講座番号:11  「ビリヤードは数学」
講師:渡辺喜長 先生 (愛知県立瑞陵高等学校教諭)
実施日・会場:7月28日(金) 9:00-10:00 愛知県立瑞陵高等学校
参加者:本校生徒 1年生 12名   2年生 2名 外部参加 中学生 32名  高校生 1名 教員 3名 総計 50名 
内 容:はじめに最短距離問題についての解説があり、「反射の原理」について学び、様々なパターンについて考察を行った。そこからビリヤードの球の反射や、エアホッケーの必勝法について、様々なパターンがクイズ形式で出題され、受講生が答える形で講義が進行した。最後に、円周面で反射する場合や、楕円面で反射する場合の話題に触れた。身近なものと数学の関連について、楽しみながら学ぶ良い機会となった。
特徴的な生徒の記述
・スポーツを数学的に考えるところに、面白さを感じました。また、正確に作図したものと感覚で描いたものの差が人によって違うところが面白かった。
・最初の数学の最短経路問題から、ビリヤードやエアホッケィにつながるところがすごいなと感じた。他の問題でも、普段の生活に数学が活かせることがあれば、さがしていきたいと思う。
・長方形や楕円のビリヤード台だけでなく、いろいろな曲線に囲まれたビリヤード台を考えてみたい。
講座番号11
講座番号:12  「連分数とフォードの円」
講師:糸 健太郎 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 准教授)
実施日・会場:7月21日(金) 14:00-16:00 愛知県立半田高等学校
参加者:本校生徒 1年生 11名  2年生 12名  外部参加 中学生 2名  高校生 8名 教員5名 総計 38名 
内 容:連分数の具体例として、√2 や 黄金比φの連分数展開について紹介があった。A4用紙を折りながら、√2 の連分数展開の図形的な意味の説明があった。また、黄金比φに収束する既約分数列を考えることで、フィボナッチ数列と黄金比φの関係が示され、フォードの円へと話が発展した。フォードの円を用いて無理数を図形的に説明すると、シンプルな黄金比φと複雑な円周率πの違いが強調されたように思う。高校で学習する様々な知識の断片が、漸化式や図形でつながるところが、たいへん興味深かった。
特徴的な生徒の記述
・フィボナッチ数列とフォードの円が近い関係にあったこと、黄金比の図形的表現、フォードの円で全ての有理数が出てくることに驚いた。
・題名の「連分数」と「フォードの円」の2つがつながったとき、すごいなと思った。一つ一つのことを学ぶだけではなく、そのつながりを学ぶことの面白さを感じた。
・虚数での連分数はどうなるのか考えてみたい。
講座番号12
講座番号:28 「身近なゲームとグラフ理論」 (フォローアップ講座)
講師:藤江 双葉 先生(名古屋大学大学院多元数理科学研究科 准教授)
実施日・会場:10月07日(土) 10:00-12:00 本校
参加者:本校生徒 1年生 10名  2年生 15名  総計 25名
※講座番号4「素数と暗号の不思議」の代替講座 
内 容:「グラフ」とは、頂点と辺の集合で構成される図形であり、その頂点と辺のつながり方に着目してグラフの性質を調べる数学がグラフ理論である。前半は、K6(頂点6個の完全グラフ)の2色塗り分けゲームとからめて、〇×ゲーム(三目並べ)の勝敗が着かないことをグラフ理論で証明した。後半は、有向グラフであるトーナメントグラフの中に、ハミルトンパスが必ず存在することを背理法で証明した。モノとモノのつながり方を抽象化して捉えるというグラフ理論の面白さを存分に堪能できる講座であった。
特徴的な生徒の記述
・グラフ理論の発生から確立までの歴史が面白かった。いつもの数学とは違って、少し絵画的な要素が入っていると感じた。難しそうなグラフでも矢印や色を用いれば単純化できたり、構造がわかったりするので、これからの数学に活かしていきたいと思った。
・〇×ゲーム(三目並べ)という誰でも知っているゲームが、数学的に読み解けるということがすごいと感じた。
講座番号28