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SSH事業 「数学 夏の学校」

「数学 夏の学校」実施報告

アラカルト講座の中に「数学 夏の学校」として,夏季休業中に開設している講座で,今年度で6年目になります。今年度は全部で10講座開講し,地域の中学生181名,他高校生122名,本高生234名が参加した。来年度から始める予定の「課題探究」(来年度の2年生に2単位)の基礎になる講座です。以下に,受講後の生徒の特徴的な記述を掲載します。なお,本校教員が担当した講座には,評価点(より客観性を持たせるために各講座の担当者が作成したルーブリック表による評価を20点満点に換算して数値化したもの)を記しました。

講座番号:1 方程式の解の公式を巡って
講師:松本耕二(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
実施日: 7月25日(月)1330~1530,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 48名
        本校生徒 1年生 17名  2年生 11名
        外部参加 中学生 8名  高校生 9名  教員 3名
内 容:高次方程式の解の公式を巡りながら、代数学の歴史とそれを発展させた数学者の業績について紹介された。3次、4次方程式の解の公式を導き出す過程では、ポイントとなるアイディアに触れながら複素数の重要性についても説明があった。体系的に学ぶのではなく、歴史的な流れの中で数学を眺めることができる内容であった。知的好奇心を刺激された参加者が多く、講義後の質疑応答の時間も充実したものになった。
特徴的な生徒の記述
・今まで、公式などはただ覚えていただけでしたが、3次方程式の解の公式のような、こんな面白いストーリーがあるのなら、もっと知りたかったです。数学の歴史をもっとしりたいと思いました。(明和・高1・女)
・複素数がなぜ重要なのかということが、根本的にわかった。また、数学者の歴史も意外におもしろいということがわかった。複素数についてもっと追究したいと思った。(明和・高1・男)
・「できない」と言われていることを、新たな道具(楕円モジュラー関数・超幾何関数)を使うことで覆してきた数学者たちの努力の歴史を知ることができて興味深かった。(明和・高2・男)

講座番号1
講座番号1
講座番号:2 集団での追跡と逃避
講師:大平 徹(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
実施日: 8月4日(木)1330~1530,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 49名
        本校生徒 1年生 19名  2年生 9名
        外部参加 中学生 15名  高校生 4名  教員 2名
内 容:導入としてバランス制御(棒の重心の追跡)と鳥の大群の移動(集団の動き)の映像から講義が始まった。多岐にわたる内容を映像を交えて説明する形で講義が進行した。車の自然渋滞発生のメカニズムについては微分数式が、「見えない相手をつかまえる」と題した1対1の追跡と逃避に関する問題では極座標表示が提示・紹介され、受講生はとても興味深く聞いていた。ガンの治療やドローンの飛行制御など様々な分野に応用される可能性がある分野であることが紹介され、数学の可能性を感じることのできた講義であった。また、講義終了後も講師の先生に質問に行く受講生が多数おり、興味関心の高さが感じられた。
特徴的な生徒の記述
・最善の追いかけ方、逃げ方を考えることについて、求めることは複雑でも、解はシンプルということもあり、とても興味深かった。(明和・高2・男)
・数学的計算やグラフで算出した追跡と逃避のパターンが、自然界で起こっている鳥や魚の群れの例に当てはまるという点に驚いた。(高1・男)
・難しい式ではあったけれど、追跡するときの動きが式に表せることに数学の可能性を感じた。追跡と逃避というテーマの上ではルールが無限に広がるので研究は難しいと思うけど、解明したときの達成感が大きいと感じた。(中3・男)

講座番号2
講座番号2
講座番号:3 時空幾何学の世界
講師:白水徹也(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
実施日: 7月28日(木)1400~1600,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 60名
        本校生徒 1年生 19名  2年生 13名
        外部参加 中学生 9名  高校生 15名  教員 4名
内 容:光速度不変の原理から重力によって光が曲がる思考実験と、それを「時空のゆがみ」と考えたアインシュタインの天才的発想について説明があった。また、アインシュタイン方程式の意味や、ローレンツ変換についても説明があった。ニュートン物理学でさえ十分に学んでいない参加者にとっては、かなり高度な内容であったと思われるが、ブラックホールや重力波の話しには、強い関心を示していた。難しい内容ではあったが、参加者の興味・関心をかきたてる講義内容であった。
特徴的な生徒の記述
・数学のつもりで受講したが、かなり物理の内容が絡んできておもしろかった。方程式を解く、そこからわかることがあるなど、数学的な面も多くあったので良かった。(明和・高2・男)
・1学期に学習したベクトルの概念が、3次元をこえた宇宙まで広がり、興味深く感じた。また、∞の学習も待ち遠しく思った。(明和・高2・女)
・しっかり物理学の基礎を身につけてから、再び取り組もうと思った。未発見のことや、近似しかできないことがあるなど、宇宙の大きさに圧倒された。(高2・男)

講座番号3
講座番号3
講座番号:4 グラフ理論
講師:藤江双葉(名古屋大学大学院多元数理科学研究科准教授)
実施日: 8月 3日(水)1000~1200,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 56名
        本校生徒 1年生 15名  2年生 16名
        外部参加 中学生 15名  高校生 9名  教員 1名
内 容:「グラフ」とは、頂点と辺の集合で構成される図形であり、その頂点と辺のつながり方に着目してグラフの性質を調べる数学がグラフ理論である。はじめにケーニヒスブルグの一筆書き問題に対するオイラーの証明が紹介された。その後、サイクル分解等の具体的な演習を進めながら、オイラーグラフと同値な条件がいくつか説明された。抽象化されたモノとモノのつながり方を様々な切り口で分析する方法が紹介され、グラフ理論の面白さを存分に体験できる講座であった。
特徴的な生徒の記述
・一筆書きの話は知っていたが、完全グラフ、サイクル、グラフの分解という視点は初めてで、新たな視点をもたらしてくれた。(明和・高1・男)
・身近な問題をグラフにして考えるという、少し違った考え方で解決できる問題があることを知った。違った視点で考えるって大切だな、とあらためて思った。(明和・高2・女)
・一筆書きができるかどうかの調べ方は知っていたけど、それをグラフ化して考えると新たに知ることもあった。オイラーグラフはいろいろな特があるので、もっと調べてみたい。(明和・高2・男)

講座番号4
講座番号4
講座番号:5 江戸時代の数学
講師:深川英俊(皇學館大学非常勤講師、和算家)
実施日: 7月26日(火)1330~1530,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 59名
        本校生徒 1年生 21名  2年生 3名
        外部参加 中学生 21名  高校生 11名  教員 3名
内 容:前半は、中高生にも理解できる内容として、「塵劫記」のネズミ算や日本各地の神社に奉納されている算額の初等幾何問題について、演習形式で紹介があった。後半は、実物大の算額(レプリカ写真)や関孝和の和算の原書(実物)を披露しながら、文化遺産としての和算についての紹介があった。江戸時代の日本の数学のレベルの高さと、楽しみながら数学の問題に取り組んでいた様子が良くわかり、とても感動できる内容であった。
特徴的な生徒の記述
・数学も「遊び心」をもって取り組めば、「勉強」だと思わずにできるかもしれないと思った。また、江戸時代の算術は、実用的でリアルな場面が設定されていたことがわかった。(明和・高1・男)
・数学が日本で高度になったのはつい最近だと思っていたが、すでに江戸時代に高度であったことに驚いた。(高2・男)
・江戸時代は、10~11歳の少年や少女が、難しい和算を考えていたことを知った。自分もいろいろなことに挑戦していくべきだと思った。(明和・高1・男)

講座番号5
講座番号5
講座番号:6 対数と計算尺
担当者名:  服部展之(本校教諭)
実施日: 8月 1日(月)1330~1530,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 41名
        本校生徒 1年生 14名  2年生 0名
        外部参加 中学生 20名  高校生 4名  教員 3名
内 容:前半は、対数の定義と対数法則の説明があり、常用対数を利用した近似値計算を行った。後半は本物の計算尺を使った近似値計算を体験し、両者が一致することを確認した。理屈を理解した上で道具を利用することの大事さと、過去の人類の知恵を学ぶことができた。また、アシスタントのSSH部数学班の生徒が要所で解説を行い、参加した中学生にとっても良い刺激になったと思われる。
評価点(20点満点)平均:16.0(明和生徒のみ評価)
特徴的な生徒の記述
・欧米人は掛け算が苦手というが、どうしてこれほど科学技術が発達したのか疑問に思っていた。今日、対数と計算尺の歴史と関係があると知って、スッキリした。(明和・高1・女)
・常用対数表の作成方法が気になった。概数については、これまであまり重視してこなかったが、ざっくりしたイメージをつかむには有用だと思った。(明和・高1・男)
・電卓みたいに自分で考えずに答えを出せるものより、計算尺みたいに原理がある程度分かっていて使えるものの方が楽しいと感じた。昔の人のすごさを感じた。(中3・女)

講座番号6
講座番号6
講座番号:7 数学を英語で学ぼう
担当者名:  川野景子(本校教諭)
実施日: 7月29日(金)1330~1530,場所:本校(視聴覚教室)
参加者数: 総計 49名
        本校生徒 1年生 21名  2年生 4名
        外部参加 中学生 16名  高校生 3名  教員 5名
内 容:前半は ”How to sketch Parabolas(放物線の描き方)”の英語による講義であった。受講生は頂点、x軸、y切片、~について対称、解の公式、分数、2乗、曲線などの英単語を知るとともに、数学は数字や数式を用いるからある程度理解できると感じているようだった。後半は、5~6名のグループになり、初見の英語で書かれた問題を読み、解き、英語で解答を発表することを体験した。どのグループも協力して行っていた。数学、英語の両方とも、もっと勉強していきたいと感じた受講生が多いようであった。
評価点(20点満点)平均:17.4(明和生徒のみ評価)
特徴的な生徒の記述
・もっと英語を勉強しようと思った。本当に、数学、英語どちらか一方だけでは意味がないと思い知った。また、よりプレゼンが上手くなりたいとも感じた。
・一つ一つの単語を理解することは難しいけど、x-axisやcoordinateなど予習してきたこともちゃんと生かされてよかったと思い、それが答えにたどりつき理解する上で必要だったりしたことが印象に残った。
・もらったテキストを家で見てみようと思った。二次関数は一度学校で習っているから理解できたけど、英語だと印象がちがってなんか良かった。
・英語で数学を説明する時、もっと複雑になるかと思ったが、数学や記号は共通なので分かりやすかった。数学を通じて、日本語と英語が親密に感じた。

講座番号7
講座番号7
講座番号:8 流体力学の世界
講師: 木村芳文(名古屋大学大学院多元数理科学研究科教授)
実施日: 7月22日(金)1030~1230,場所:愛知県立瑞陵高等学校
参加者数: 総計 74名
        本校生徒 1年生 9名  2年生 4名
        外部参加 中学生 34名  高校生 20名  教員 7名
内 容:磁気嵐、天気図、ジェット機の作る渦、水着や炊飯器の開発など、具体的な応用例が上げられ、流体力学の世界をイメージすることができた。そしてベクトル場のナヴィエ・ストークス方程式も紹介され、高校で学習するベクトルや微分方程式が、実際に応用されていることがよくわかった。また、流体力学の課題と数学の役割についても説明があり、参加する生徒にとって有意義な講義となった。
特徴的な生徒の記述
・流体力学は身近な問題である。学校で勉強している数学は基本の基本の基本。(明和・高1・男)
・流体力学が数学と密接に関わっているところが奥深いと思った。また、身の周りの事象が、数学を利用してナヴィエ・ストークス方程式にまとめられることは、とても素晴らしいと思った。(明和・高1・男)
・身の周りの対流、渦など、流体力学について追究したい。木の芽は流れていないけど、成長によって同じことがおきているのかな、と思った。また、渦を直線状にすると三角形ができるところから何か求められないかな、と思った。(高1・男)

講座番号8
講座番号8
講座番号:9 ビリヤードは数学
講師:渡辺喜長(愛知県立瑞陵高等学校教諭)
実施日: 7月22日(金)0930~1010,場所:愛知県立瑞陵高等学校
参加者数: 総計 75名
        本校生徒 1年生 13名  2年生 6名
        外部参加 中学生 39名  高校生 15名  教員 2名
内 容:はじめに導入として「反射の原理」すなわち、最短経路問題について解説があった。そこからビリヤードの球の反射や、エアホッケーの必勝法について、様々なパターンがクイズ形式で出題され、受講生が答える形で講義が進行した。最後に、円周面で反射する場合や、楕円面で反射する場合の話題に触れた。身近なものと数学の関連について、楽しみながら学ぶ良い機会となった。
特徴的な生徒の記述
・身近なゲームや現象が数学と深いつながりがあることがわかり、他にも同じようなことがあるか追究したいと思う。(明和・高1・男)
・身近なスポーツにも数学が関係しており、頭を使って勝負に勝つことを学んだので、これからは少し頭を使って身の周りのことに興味をもちたいと思った。(明和・高2・女)
・数学は将来使わないと思われがちだけど、そうではないことが再認識できた。身近な数学に触れてモチベーションが上がった。(高2・男)

講座番号9
講座番号9
講座番号:10 ゲーム理論
講師:渡辺喜長(愛知県立瑞陵高等学校教諭)
実施日: 8月24日(水)1330~1530,場所:愛知県立半田高等学校
参加者数: 総計 59名
        本校生徒 1年生 14名  2年生 6名
        外部参加 中学生 4名  高校生 32名  教員 3名
内 容:「ゲーム理論」とは、相互の利害関係を考慮した経済や社会の現象を数学で記述しようとする理論である。NOT100、サッカーのPK、数当てゲームなどの例から「後ろ向き帰納法」、「マクシミン戦略」、「ナッシュ均衡」、「劣位戦略」など、ゲーム理論の代表的な考え方が紹介された。有利な戦略を考えることが数学の理論になる面白さを存分に味わうことができる講座であった。
特徴的な生徒の記述
・社会学に興味があるので、数学的視点からの社会の見方を知ることができてとても良かった。社会と数学の関わりについて、もっと深く追究していきたいと思った。(明和・高1・女)
・一見、片方が有利であると思っても、相手の行動を考えることで、他方の方が利益が大きい場合もあることに驚いた。これからは、運試しのような状況でも、一度合理的に戦略を考えてみようと思った。(明和・高1・男)
・数学はかなり専門的という感じがするが、実は社会の動きや人間の心理を解明できたり、日常に関わっている学問だと思った。(高1・男)

講座番号10
講座番号10