液晶講座 ~ 後半の作業詳細編
リベンジ・トライアル、復習を兼ねてQ&Aなど・・・
●リベンジ作品(8/1) | |
スマイル! | 何だろう? |
ねこ? | 桜の花? |
マスキングのデザインで苦労していた人も多かったので、確認のため・・・。
ITOガラスは、導電面が向かい合わせになるように
重ねます。上面のITOと下側のITOが重なる部分が
「黒」、上下の片方だけか、上下ともITOを剥がした
部分は「白」になります。電池のOn-Offで、「黒」は
黒⇔白 と変化し、「白」は白のままです。
エッチング後の液晶はさみこみ作業【確認】
① | 導電面側を上にして、 スペーサー「ミクロパール」を スパーテル1さじ分置きます。 |
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② | 5CBを3~4滴落とします。 たくさん使いすぎると、貼り合わせたときに あふれます。 |
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③ | 竹串で、スペーサーがよく馴染むように かき混ぜます。粒が見えなくなったら、 うすく伸ばします。 |
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④ | 空気の泡が入らないように、もう1枚の ITOガラスを、導電面を下にして乗せます。 |
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⑤ | 左右に1cmのズレをつくっておきます。 ここが電池をつなぐ電極になります。 |
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⑥ | ゴムひもの輪っかで仮止めします。 | |
⑦ | うまく表示ができるか、ライトボックスで 確認します。 偏光板はクロスではさみます。 表示面がおかしい場合は、液晶を洗い流し、 ①から繰り返します。 |
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⑧ | 端からはみ出た液晶を、 綿棒で拭き取ります。 |
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⑨ | 次に、接着剤で固定します。 ガラス用接着剤は種類が少ないです。 今回は、A-B-2液混合タイプの エポキシ接着剤を使います。 紙の上で混ぜて、竹串を使って 接合面に塗っていきます。 10分ほど経ったらゴム紐を外します。 良さそうなら、側面にも接着剤をつけます。 偏光板を上下に重ねたら完成です。 |
Q&A
Q1: ITOの残っている部分と剥がした部分では、
間に入れる液晶(5CB)の厚みが変わってしま
いませんか?スペーサーがうまく入らないので
はないですか?
A1: 厳密に言えばその通り、厚みが変わってしま
います。しかし、スペーサーの大きさが5μmに
対し、ITOの厚さは0.3μmとわずかなので、
今回の実験では無視しています。複雑な図形
などをエッチングすると、0.3μmのでこぼこが
画面の表示に影響する場合もあります。
実際の製品では、ITO面に「配向膜」を塗布し
ているので、でこぼこは消えます。
(テキストのリンク「ラビング」参照)
Q2: スペーサーって、液晶の邪魔をしたりしませ
んか? スペーサーのある部分は表示がで
きなくなるのでは?
A2: スペーサーのある部分は、確かに表示を邪
魔してしまいますが、なにしろ5μmですから、
ほとんど影響はありません。液晶画面を顕微
鏡で拡大すれば、スペーサーのあるところに
「ポチ、ポチ」と点が見えると思います。もちろ
ん入れすぎれば見にくくなります。
Q3: いまいち、どこが黒になってどこが白なのか
よくわかりませんでした。
A3: ツイストネマチック(TN)方式を採用してつくっ
ています。って、余計にわからなくなった!
かもしれませんが。
偏光板を90°ずらして挟み込むので、基本は
「黒」です。そこに、液晶が入り込みます。電池
をつなぐ前の液晶は、なんとなくガラス面と平
行に、寝転んだような方向を向いて並んでい
ます。ただ、規則性がないので、光をいろいろ
な方向に曲げてしまいます。結果として、本来
は「黒」になるはずだったのが、挟んだセロテ
ープみたいに、「白」じゃないかもだけど「黒」
ではない表示になります。一応、光が通るの
で、これを仮に「白」と呼びます。
きちんとつくるなら、上下のITOガラスに、90°
ずれたラビングを施します。そうすれば、きれ
いな「白」になります。
電池をつなぐと、上下ともITOが残っているとこ
ろに電圧がかかり、そこに挟まれた液晶だけが
ガラス面と垂直な方向に向きます。
(本編テキストのリンク図を参考にしてください)
すると、その部分だけ光は変化を受けず直進
してしまい、2枚目の偏光板を通過できないの
で、はっきりとした「黒」になります。
Q4: ガラスにくっつく接着剤にはどんなものが?
A4: 2液混合型のエポキシ接着剤か、UV硬化型の接
着剤ぐらいしかありません。アロンアルファなどの
瞬間接着剤では剥がれてしまいます。
エポキシ接着剤なら100均でも売っています。
Q5: 5CBが手に着いてしまったのですが・・・。
A5: すぐに石鹸で水洗いしましょう。毒ではないです
が、油っぽくて水では落ちません。手が荒れやすい
人はゴム手袋を使ってください。また、口に入れたり
ついた手で目を擦ったりは絶対ダメです。
Q6: 液晶分子は電気を通すのですか?
A6: 電気は流しません、絶縁体です。
Q7: えェっ!? じゃあなぜ、ON-OFFで変化するの
ですか?
A7: 電流は流れませんが、電圧をかけると、+とーの
方向に分子が向きを変えます。その動きを使って
表示を可能にしています。
強い磁石を置くと、近くにあった方位磁石が向きを
変えるのに似ています。静電気に引っ張られた毛玉
や髪の毛のような状態です。電圧はかけてますが、
電流はほとんど流れないので、電卓などの液晶表
示器は、ほぼ電池を食いません。電池を消耗するの
は、裏から光を当てているバックライトなどがほとん
どです。バックライトのない電卓などで、太陽電池
式のものなど、わずかしかエネルギーを消費しない
ので、極めてエコです。
Q8: 光が偏光板を通過するとき、ある一方向に振動す
る光だけが通過できるそうだが、どうしてそうなるの
かわかりませんでした。
A8: その説明は高校の教科書には書いてありません。
できるだけわかりやすく解説してみますね。
偏光板は、実験した通り、ヨウ素をPVAフィルム(ビ
ニロン)に吸着させ、フィルムを一方向に引き伸ばし
伸長させて作ります。その際、ヨウ素は伸長方向に
一列に並びます。実際には、3つ、5つ•••と奇数個
つながっているようです。たくさんつながったヨウ素
を「ポリヨウ素」と呼びます。さて、PVAもヨウ素も
電気は流しませんが、ポリヨウ素のつながってい
る一列の中だけでなら電子が動くことはできます
(隣のポリヨウ素には伝わりませんが)。そこに
光が入り込んできた場合を考えます。ポリヨウ素
の伸長方向と同じ方向に振動している光は、ポ
リヨウ素の中の電子を揺さぶります。揺さぶられ
た電子はポリヨウ素内を振動しはじめますが、
その運動するエネルギーは光が与えたもので、
その分だけ光のほうは持っていたエネルギー
を失うことになります。だから、ポリヨウ素の伸長
方向に振動する光は、偏光板を通過できなくな
るわけです。また、伸長方向と90°の垂直方向
に振動している光の場合は、ポリヨウ素内の電
子を揺さぶることができず、よってエネルギー
も減ることなく偏光板をそのまま通過します。
結果をまとめると、ヨウ素の伸長方向に振動する
光がカットされることになります。
Q9:電卓の偏光板を裏返すと、白黒反対の表示になり
ました。
は裏返しても のままだと思いますが。
A9: なら裏返すと になり、90°回転させたのと
同じになりますね。つまり電卓の偏光板は45°方向
に伸長させたものが使われていることがわかります。
Q10: 液晶分子の特徴、っていわれても、よくわかんな
かったんですが…。何か共通の特徴あります?
A10: 一応、講義の中で説明したつもりでしたが…。
化学式の見方をまだ習ってなくてわからなかった
かもしれませんね。説明しませんでしたが、液晶状態
になる物質は、1万種類ぐらいあります。その中で、
今回はディスプレイに使われる「ネマチック液晶」に
ついてのみ考えています。
まずは「細長い形」が重要です。そうでなければ液晶
状態になりません。細長い分子であると同時に、分子
内に「堅い」部分と「柔らかい」部分を持ってい
ます。5CBでいうと、6角形の部分が頑丈な堅い
部分、端のヒョヒョロっと「C-C-C-C-C-」と炭素
が5個伸びているところが動くことのできる柔らかい
部分です。
次に、電気の力を受けやすい部分を持つことです。
5CBでいうと、「CN」(シアノ基)の部分です。
ここが電圧をかけたときに「ピクッ」と反応して、
分子の向きが変わるのです。もし、5CBからCNを
取ってしまったら、液晶状態にはなるが、電圧をか
けても向きが変わらない、ディスプレイには使え
ない液晶物質になるでしょう。
Q11: 今回つくった液晶表示器は、決まった絵柄しか
表示できないんですか…?
A11: はい、基礎的なことを学ぶために1つの絵柄の
ON-OFF だけができる表示器を作りました。
実際のディスプレイは、実習で観察したように、
顕微鏡で見ないとわからないぐらい細かい画素
の集まりです。その画素1つ分のON-OFF
に当たる分を作ったのです。
Q12: えェ~っ!? 1つでも大変だったのに…!
そしたら、1つずつ配線とか、別々にON-OFF
するとか、どうなっちゃうんですか?
A12: そうなんです。「300万画素」とか言ったら
その数だけ配線が必要になります。もちろん
それを少しでも減らして配線する工夫はしてい
ます。その話はまた別の機会に…。
Q13: 液晶物質(5CBとか)はすごく値段が高いとの
ことでしたが、それが身近なものに使われている
とすると、それらの値段が高くなっちゃうと思うの
ですが…。
A13: 大丈夫です。WEBテキストのリンクでも説明し
たように、液晶の層は5μmほどしかないので、
1つのディスプレイに使用する液晶の量はわずか
数滴です。
Q14: 今後探究活動などで、調べたり研究したり
すると面白いことがあるとのことでしたが、たと
えばどんなテーマがあるでしょうか?
A14: WEBテキストの アイコンをつけたとこ
ろがそれを意識して記載した箇所です。そのう
ちの3つぐらいを、ちょっと詳しく説明しましょう。
(1) PVAとヨウ素以外の組み合わせで偏光板が
作れないか? PVAは変えないでおき、ヨウ素
以外に色素などを吸着させて伸張させてみたり、
何か伸びそうなプラスチックフィルムなどにヨウ素
を吸着するか試してみたり、いろいろ実験してみる
と、何かわかるかもしれません。
(2) 不透明なものの屈折率測定。反射光は偏光
成分が含まれますが、その時のブリュースター角
は、反射させた物質の「屈折率」と関係がありま
す。反射するものには不透明なものもあるわけで
すが、その時の屈折率との関係ってどうなってい
るのか実験してみると、面白いことがわかるかも
しれません。
(3) 白色光の作り方。今回の実験ではRGBの3色
を混ぜて白色光を作りましたが、白色LEDランプ
は2色(黄+青)でできています。他のランプなど
どうなっているか、分光器を使って調べてみると
何か新しいことがわかるかもしれません。
試しに、手元にあった分光器で、身近にある
「白色」のスペクトルを調べてみました。どれも
いわゆる「白色」ですが、随分異なるスペクトル
になっていました。 → LINK 測定結果