定電圧ダイオード と 定電流ダイオード
(Zener Diode and Current Regulative Diode)
●ことの始め
チタンを陽極酸化するための電源装置を作ろうとしていたときに、定電流ダイオード(CRD)という便利な部品があることを知りました。いろいろなところに使えそうな部品なので紹介してみます。その前に、まずは、何を作ろうとしたかを簡単に説明しておきます。
チタンの陽極酸化には、直流電源(DC 0〜200V程度)が必要です。電気分解と同じ実験装置になりますが、学校とかにある普通の電源装置ではDC30V程しか出ませんので、もっと高い電圧まで出せる高価な電源装置を購入するか、自作するか、になります。
まず、調光器でAC100VからAC 0〜100Vをつくります。どこの学校にも物理室に「スライダック」があるので、それを利用します。次に整流器ですが、ここではダイオードを使って交流(AC)を直流(DC)に変えます。いわゆる「ブリッジ整流」をするのですが、それだけでは電圧が脈打って一定にならないので、コンデンサを使って平滑化します [このあたりの話は主題から逸れるので略します]。整流器の部品としては、ダイオード4本と容量の大きなコンデンサがあればできるので、数百円〜2千円程度でつくることができます。
さて、その整流器ですが、100Vという高い電圧がかかっていても見かけはなにも変わらず、本当に電気が流れているのかわかりません。そこで、電圧がかかっているときにはLEDが点灯して、見てわかるようにしようと思いました。LEDは2V程度の電圧、10mA程の電流があれば光ります。しかし、かける電圧が高すぎると壊れてしまいます。どれだけ高い電圧であろうと決まった一定の値であれば、計算してちょうどよい抵抗を入れることで電圧制限ができますが、高い電圧に合わせて大きな抵抗をつけてしまうと、低い電圧の時に光らなくなってしまいます。どんな電圧がかかっていてもLEDには2Vがかかるようにしなければなりません。これは案外やっかいで、幅広い電圧に対応するには工夫が必要です。
そこで、まず考えたのが「ツェナーダイオード」の利用です。以下で説明をしていますが、2VのツェナーダイオードをLEDに並列に入れてやるだけで、2V以上の電圧がかかってもLEDには2Vしかかからないようになります。しかし、最大定格を超えた電圧をかけると壊れてしまいます。この電圧は高くても50V程度なので、今回の用途では残念ながら壊れてしまいます。
●ダイオードにはいろいろな種類がある
普通のダイオード | 定電圧ダイオード | 定電流ダイオード |
Diode | Zener Diode | CRD |
[1] 定電圧ダイオード(ツェナーダイオード)
いろいろな規格(ツェナー電圧)のものが売られている。逆方向(カソードを+、アノードを−)に接続し、安定した電圧を得ることができる。一定以上の電圧がかかると、ツェナーダイオードに逆方向の電流が流れ、電圧の上昇を抑える。安定化回路の基準電圧源(リファレンス)、定電流回路、ノイズ吸収、サージからの保護にも使われる。部品点数を削減できるので簡易的な定電圧電源としても利用される。
[2] 定電流ダイオード(CRD)
定電流ダイオードCRD(Current Regulative Diode)は、電圧が変動しても一定の電流が供給可能なダイオードである。広い電圧範囲で、電圧の変動、負荷抵抗の変化、リップル電圧等に係ることなく一定の電流を供給することができる。 一般的に定電流回路は部品構成が複雑で設計も繁雑になるが、CRDはたった1個の部品で定電流特性を簡単に実現できる。
●定電流ダイオード=CRDを使おう!
2Vのツェナーダイオードは諦め、10mAのCRDを使うことを考えました。データシートを確認してみると最大定格電圧が400Vとのことで、十分使えそうです。前述の回路図どおり、LEDの配線の途中に直列に入れて組み込みました。
もちろん、2V以下ではLEDは光りませんが、数V〜100Vかけても、LEDに流れる電流は10mAのままで、うまくいった感じです。電流が流れているとき点灯するので注意ができ、感電防止にもなります。これ、いろいろなところで使えそうだと思いました。
整流器回路図